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アークエルテクノロジーズ株式会社

代表取締役 宮脇 良二

#福岡で取り組む実証実験

新たな電力供給のシステム「ダイナミックプライシング」で、脱炭素化社会の実現を目指す起業家

地球温暖化をはじめとした環境問題が深刻化している現代。クリーンエネルギーへの移行や再生可能エネルギー(以下、再エネ)の有効活用に対して、世界規模での取り組みが求められています。福岡市に本社を置く、アークエルテクノロジーズ株式会社は、脱炭素化社会という社会的課題の解決を目指し、エネルギーの新しい仕組みの普及を目指す会社です。代表取締役の宮脇良二さんに、日本のエネルギー構造や電力のダイナミックプライシングなどについてお話を伺いました。

電力供給とテクノロジー、2つの事業でエネルギーの未来を切り開く

 はじめに、御社の事業内容について教えてください。

宮脇 私たちは、2050年までに脱炭素化社会の実現を目指して、2つの分野で事業を行っています。まず電力会社としてエネルギーに関するデータを集積する「アークエルエナジー」。電力会社でなければアクセスできないデータを取得し、エネルギーを効率的に活用できる仕組みの構築を目指しています。次に都市ガス会社を中心としたDXコンサルや「アークエルエナジー」で使用するソフトウェアの開発を行う「アークエルデジタル」です。エンジニア集団とコンサルタントによって構成され、電力事業で収集したデータの解析や電力の制御、伝達システムの開発を行っています。それぞれの領域のプロを集結させ、脱炭素化に対してモチベーションの高い企業のデジタル化に向けたご支援をしています。

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 御社が取り組まれている経済産業省の実証実験「ダイナミックプライシング」の仕組みについて教えてください。

宮脇 電力は1日の中で価格に変動があります。株式のように電力の取引所が存在し、電力会社と30分単位、1日48コマの電力取引を行っているんです。例えば九州の場合、価格が一番安い時間帯の電力は、太陽光と風力に、地熱、水力、原子力発電を中心としたクリーンエネルギー。反対に価格が一番高い時間帯は、二酸化炭素を排出する火力発電の稼働が高いエネルギーです。しかし、消費者の電気料金は使用量に対して一定なので、この仕組みを理解している消費者は少なく、電力会社と消費者の間で情報の非対称性が起こっています。ダイナミックプライシングとは、この両者のギャップを埋めるために、電力を原価で提供する取り組みです。消費者に時間帯の価格差を知ってもらい、できるだけクリーンなエネルギーを活用するよう、生活や行動様式を変化させることを目的としています。

 御社はどのような役割を担われているのでしょうか?

宮脇 私たちの電力会社で契約するとサブスクリプションのような形で、月額1000円払えば原価で電力を購入することができます。このダイナミックプライシングのメニューは、2020年11月からスタート予定です。使い方を間違わなければ、かなり安く電気を使えるようになると思います。また、消費者がどの時間帯の電気料金が一番安いかを30分ごとにチェックするのはとても非効率です。そこで、よりスムーズに価格の確認ができるようAIを活用し、消費者に合わせた電気使用のタイミング通知してくれるような、LINEのミニアプリも開発も進めています。このダイナミックプライシングの仕組みは、電力を貯めておける蓄電池との相性が非常に良いです。今はまだ価格が高く、蓄電池の普及は進んでいませんが、2020年代中盤には電気自動車の時代になり、価格がぐっと下がるはずです。その未来には、きっとこの仕組みが電力の構造を変えるものになります。そんな未来を見据えて、現在準備を進めています。

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スタンフォード大学留学中に得た、エネルギー事業に対する考え方とヒント

 脱炭素化社会の実現というミッションに辿り着くまでに、どのようなストーリーがあったのでしょうか?

宮脇 私は起業する以前、アクセンチュア株式会社に20年間勤務し、エネルギー部門のトップとして大手クライアントを担当していました。学生時代から起業をしたいという想いがあり、エネルギー事業に関わる中で環境課題への関心を強くしていったんです。また起業当時は、東日本大震災をきっかけにエネルギーの供給構造が原子力から別のモノへと変化が求められ、再生可能エネルギーや新電力が登場し始めていました。抱えていた案件に区切りが付いたことなども重なってアクセンチュアを退職し、すぐにアークエルテクノロジーズ株式会社を設立しました。その後1年間アメリカ・シリコンバレーに単身渡米し、スタンフォード大学に留学。最先端のIT技術とスタートアップで賑わう環境に身を置き、脱炭素化というミッションをより具体的なモノへと確立していきました。

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 シリコンバレーでは、エネルギー事業についてどのような学びやヒントが得られたのでしょうか?

宮脇 クリーンテックに関する事業は、成果が出るまでに時間が必要だということです。数年でEXITする業界ではなくて、5年10年と時間をかけて徐々に大きくしていかないといけません。テクノロジーが優れているだけではスケールしないので、その周りのエコシステム、大企業をどうやって巻き込んでいくかということが非常に大事だと学びました。また、今でも世界各国に足を運びエネルギー事業の視察を行っています。エネルギー事業は、その国の環境と密接しているので、それぞれの国によって状況は異なります。国ごとにエネルギーの未来を描いていかないといけないのがエネルギー事業の難しさですね。しかし、同じようなコンセプトで再エネの有効活用に取り組んでいる国はたくさんあるので、ヒントをもらいながらイメージを膨らませて、今自分たちにできることに取り組んでいます。

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2050年の脱炭素化社会実現に向けた、イノベーティブなチャレンジ

 今後の展望を教えてください。

宮脇 気候変動に対するグローバルな会議の中で、2050年が脱炭素化のひとつのゴールとされています。そんな中、私たちの役割は2つあると考えています。1つ目はテクノロジーを使って仕組みをシステム化すること。そして2つ目はネットワークを活かしたエコシステムを作り、各地域で電力の地産地消を進めていくことです。地域の人じゃないとその地域の地産地消はできません。ローカルな事業を行う都市ガス会社とパートナーシップを結ぶことで、火力発電所を可能な限り減らして地産地消の電力を徐々に増やしていきたいですね。幸いなことに、今年に入って経済産業省の実証実験やトヨタ自動車九州株式会社との取り組みというチャンスをいただくことができたので、まずはこの2つをしっかり形にしていきます。

 最後に、これから起業を考えている方に向けて、メッセージをお願いします。

宮脇 起業したいという目的を持っているのであれば、すぐにでもチャレンジをしたほうがいいと思います。あとは自分が参入したい領域について、世界規模で情報収集をすることをおすすめします。世界から見た日本を知ることも大切ですし、外の世界やカルチャーを知ることで見えてくる景色があります。福岡市は日本の中でもスタートアップの動きが盛り上がっている場所です。仲間や人が集まるところには、知恵やアイディアが生まれるので、起業をするのであれば福岡市に来て、その空気を吸ってみるのもいいかもしれません。

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ライター / ユウミ ハイフィールド