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AUTHENTIC JAPAN株式会社

代表取締役 久我 一総

目指したのは命を救う「本物の無線機器」。山から街へ、唯一無二のサービスを生活の身近に

近年、登山遭難は急増しており、日本国内だけでも山岳遭難者数は3000人を超えています。しかしその一方で、遭難でのリスクが非常に大きいということは意外にも知られていません。捜索・救助の迅速化が課題視される中、会員制捜索ヘリサービス「COCOHELI(ココヘリ)」を運営するのがAUTHENTIC JAPAN株式会社です。現在ではその信頼性が認められ、安全対策として登山施設やトレラン大会での導入や義務化も進んでいるといいます。代表取締役である久我 一総さんに、事業内容や今後の展望について伺いました。

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「ココヘリ」で積み重ねた山の領域での実績と信頼

 まずはメインとなる事業内容について教えてください。

久我 山岳での遭難者を早期発見する会員制の捜索ヘリサービス「ココヘリ」を運営しています。遭難者の命を救うことももちろん大切ですが、実は遭難で失踪扱いになると、死亡認定が下りるまでの7年もの間、ご家族は生命保険金、住宅ローンの債務弁済を受け取ることができません。遭難者を早期に発見できなければ、残されたご家族も非常に辛い思いをすることになります。ですが山では圏外になることがほとんどですし、4Gでも5Gでも携帯電話の基地局を山の隅々まで設けるのは難しい。そこでココヘリでは、遭難した際、会員証である発信機から電波を発信して、受信機を搭載したヘリが最大16kmまで電波を捉えて遭難者の位置を特定し、救助機関に速やかに位置情報を伝えることで遭難者の早期発見を可能にしたんです。

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 早期発見には、どのような体制を取られているのでしょうか?

久我 民間航空7社と契約をしていて、全国で常時30機前後のヘリをチャーターできる状態です。最初は民間だけの体制だったのですが、現在は34都道府県の警察署でも電波を捉える受信機を導入いただいるので、非常に手厚いサポートをご提供できます。2019年までの実績では未解決は3件のみ。原因は会員証不携行、会員証電源入れ忘れ、不明がそれぞれ1件ずつです。基本的にルールを守って会員証を携帯し、電源が入っていれば見つかるような体制になっています。

 人の命に関わる事業でもあり、壁も大きかったのではないでしょうか。

久我 最初は発信機と受信機のセットで2014年から2年ほど販売していました。そんな中、ユーザー100名を対象に満足度調査を実施したところ「もっと安く」「ヘリで探しに来て欲しい」というなかなかハードなご要望を頂きました。そこでどうにかしたいと考え、年会費制にシフトしたんです。年会費は1日10円の年間3650円で設定。1事案につき3フライトまで無償です。サービス開始当初は、サービスが知られていないこともあり会員を1000人集めるのに15ヶ月かかり苦労をしました。しかし、実際に遭難事案を解決できたことにより、信頼度という点でもココヘリはしっかり機能すると証明することができました。現に会員数は、コロナ禍の今期を除けば毎年約230%で伸びており、継続率も約98.3%と非常に好調です。

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山から街へ。「LIFE BEACON」で命を救うサービスを生活の身近に

 2019年の夏には、Bluetooth搭載の発信機をリリースされましたね。

久我 これまでは山域のみのサービスだったため、使用する機会が限られていました。発信機の不携帯・充電忘れ・紛失などの課題もありました。そこで、会員証である発信機にBluetoothを搭載して、普段お手持ちのスマートフォンでも200m先まで電波を受信できるようにしたんです。日常生活から使えますし、山でのいざという時にも最大16km先まで飛ぶ特殊な電波を元に探してもらえます。これが非常に好評だったのでスピンアウトさせて、Bluetooth機能を抽出・小型化した発信機「LIFE BEACON」を開発しました。2019年秋に誕生し、日経トレンディでも2020年ヒット予測9位に選んでいただきました。自宅の鍵や車の鍵に付ければ、お出かけ前によくある「鍵がない!」という際に役立ちますし、お子様に持たせてもいい。また、新たに開発したBluetooth専用受信機を使えば、Bluetoothの電波でも上空1,400mから受信することが可能です。

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 普段使いを可能にすることで、災害などの非常時にもサービスが機能するようになりますね。

久我 「災害用ですよ」と言われてもなかなか普段から身に付けにくいですよね。そこで身近な日常生活から使えるようなサービスを提供していく。するとLIFE(=生活)の中に溶け込めるので、そこで初めてLIFE(=命)を助けられるサービスになると考えています。また、今までヘリは山しか飛ばなかったんですが、災害時にも使っていただけるよう2020年8月からサービス範囲を山から街へ拡大しました。例えば、災害時に家族が見つからないという状況下で、警察に「うちの家族だけ探して欲しい」と言っても難しいですよね。そんな時、私たちのサービスに登録していれば、民間人でもヘリをチャーターすることができる。さすがに街では同時発生が考えられリスクコントロールが難しいので、フライト費用がかかりますが一般的な金額の3分の1、原価で飛ばすことが可能です。

 「LIFE BEACON」を用いた具体的な施策があれば教えてください。

久我 ライフジャケットとLIFE BEACONをセットにしたものを1人につき年会費5000円ほどで、企業様などに福利厚生の一環として提供できるサービスをスタートします。ライフジャケットは2年に1回交換するような形で。都心部では大丈夫だと思うのですが、筑後平野や朝倉など、河川の側で2,3階建てのビルにオフィスを構える企業様、もしくは農協や小学校などに導入いただくことを考えています。普段は会社の鍵などにつけることで、備品管理として使えますし、いざ災害が起こった際にはライフジャケットに付けて避難をすると。これは他社が真似できないサービスだと考えています。

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山でも街でも、災害領域で唯一無二のサービスへ

 今後の展望について教えてください。

久我 現在、一部エリアでは登山をする際に発信機携行の義務化を進めていますが、今後は日本全国で義務化されるように働きかけていきたいです。日本で年間3回以上登山をする方は約300万人、そのうち約半数の方が山岳保険に入っています。リスクを考えて保険に加入する方がそれだけいるということは、少なくとも登山人口の2人に1人が会員になることを目指せると考えています。また現在、自治体も財源が厳しい中で、長野県などは年間数千万人の捜索費用がかかっています。僕らのサービスが拡がれば、位置が特定できてすぐに捜索が終わるので、早期発見が可能になり捜索費用を激減させることができる。これは捜索機関の方や登山者の方にとって非常に意味のあることだと考えています。

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 街の領域に関してはいかがでしょうか?

久我 少なくともハザードマップにお住いの方が知っている状態をつくって、全国民1億数千万人の方に届けていきたいです。みんな日本にいる限り、災害は避けられないじゃないですか。例え1%の方の加入でも、100万人を超えます。私たちはベンチャーですが、このようなサービスは他にないので非常に厳しい分ポテンシャルは高い。山でやってきた実績と信頼を持って街に展開していけば、十分に実現できると考えています。災害というテーマに関して、唯一無二のサービスを提供する会社になっていくという実感がありますね。

 最後に、これから起業を考えている方にメッセージをお願いします。

久我 「何かから目を背けたい」「逃げたい」「就職したくないから」という気持ちで起業をするのは正直キツイと思っています。私自身、前職では何も不満もありませんでした。何も不満もないけれど、それでもやりたいことが“人の命を救う無線機器の究極版をつくる”ことでした。起業すると、想像もできないような並々ならぬことが起きます。どの仕事でも言えますが辞める理由はいくらでもある中で、特に根っこになるものを持つことが必要なのかなと思います。

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ライター / 松本 璃子