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INTERVIEW

花業界をアップデートする。生産者と花屋を「想い」で繋ぐ起業家は、なぜ「花」で起業したのか

株式会社CAVIN
代表取締役社長CEO Yuya Roy Komatsu

    花を生産する側が消費者のニーズや流行などを掴むのは難しく、効率の良い生産計画は立てにくいものと言われています。株式会社CAVIN(キャビン)ではITを駆使して、生産者と花屋がダイレクトにやり取りし、コミュニケーションを計れるツールを構築しました。花業界 を活性化させるとともに、気持ちを伝えやすい幸福度の高い社会を作りたいと語る、同社の代表取締役社長CEOの 小松さんにお話を伺いました。

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    生産者と花屋を直接つなぐプラットフォームで市場をアップデートさせる

     まずは事業内容から教えてください。

    小松 花の生産者と花屋が直接取引をする、相互交流型プラットホーム「CAVIN」が目玉です。私たちが普段、目にする花は、生産者から花市場、卸売、花屋(小売)と渡って手元に届いています。「CAVIN」ではこの従来型の流通取引にメスを入れました。生産者と花屋は生産や在庫、取引データを管理できるようになります。2020年1月から実証実験を始め、6月にはα版 サービスをリリースしました。α版公開後、既に現ターゲットエリアの3分の1の花屋に登録していただきました。また、海外に国産の花を輸出する「BINSEN(ビンセン)」という事業も行っています。

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      どんな課題から生まれたのでしょうか。「CAVIN」が世に出ることで何が変わりますか。

    小松 かつては生産者が市場のニーズを捉えられた時代があったようですが、取引規模が大きくなるにつれて消費者の動向は把握しづらくなっています。例えば、母の日にはカーネーションが定番ですが、同じ時期に実は「紫陽花を一緒に送りたい」というニーズが隠れているかも知れない。買う方が求めているものを花屋がリアルタイムに吸い上げ、生産者に伝えられるのが「CAVIN」。購買動向がわかるだけでなく、効率のよい生産計画を立てられるため廃棄ロスを減らせます。

     生産者と花屋を繋ぐとは、生産者と消費者の距離をグッと近づけることになりますね。

    小松  はい。世界的な例でいうと西アフリカのガーナの少年たちを思い浮かべます。労働環境が課題となっていますが、チョコレートの原料であるカカオ豆の皮を剥く子どもたちは、完成したチョコを食べる人の喜ぶ顔を見ることは少ないでしょう。僕はそれを残念に感じます。CAVIN」では生産者と花屋が直接やりとりできるのはもちろん、端正こめて栽培した花が最終的にどんな人の手に渡って、どんな時間をもたらしたのかといったことまで伝えられるのでは、と考えています。ガーナの彼らにもそんな機会を与えてあげたいですよね。

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    人の想いを運ぶ媒介としての花が、現代人が抱える心の貧困を救う

     なぜ花にたどり着いたのか、もう少し詳しくお聞かせください。

    小松 僕にとって、花は芸術性の高いものであり、たやすく手にとることができる自然の美しい産物です。加えて命ある花は時間というストーリーを持っています。花瓶にいけられた花があるとして、3日経っても変わらずにあるとします。気づきにくいですがその間に花瓶の水を替えて、手入れした人が存在することになります。言い換えれば花は時間やそこにかけた人の想いを内包しているのです。花は人の想いを伝えることができます。それは花が裏側にあるストーリーを感じる心を育めることを意味しています。また送る側は、花を通じて相手に何を感じてもらうのか、想像を膨らませることもできます。このように花はいろいろな可能性を孕んでいます。

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     人の想いや気持ちを伝えることに注目するのはどんな理由からですか。

    小松 僕らは「だれでも、いつでも、どこでも素直な気持ちを伝えられる社会」をビジョンとして掲げています。日本は「世界幸福度ランキング2020」で62位、自殺死亡率でいうと2017年に厚労省が発表した、世界各国との比較分析でワースト6位 。先進国ではあるが心の貧困という問題を抱えているように映ります。また、「ありがとう」「ごめんね」など本当は伝えたかったけど、伝えられなかった経験は誰にでもあるのではないでしょうか。花はそういった気持を伝えにくい場面でも、背中をポンと押す存在だと思っています。

     CAVIN事業における強みはなんでしょうか。

    小松 生産の現場に何度も足を運ぶ、現場主義を貫いていることです。やはり信頼の構築はなかなか難しくて当初は「花のこと本当に好きなの?」「なんで花?」と生産者の方に言われることもありました。そこは対話を重ねて信頼を得るしかありません。スタートアップ企業は調達やPR、ピッチイベントなどに時間を多く割くのが一般的ですが、僕たちはひたすら現場に行ってヒアリングをしたのです。お陰でより詳しい業界の知識を得ることができましたし、メンバーには課題は現場や社会にあることをより理解してもらうことができました。

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    海外での大学生活やボランティアなどさまざまな経験が今に生きている

     起業したきっかけは何でしょうか。

    小松 たくさんありますが、一つは熊本地震の際に起こした復興プロジェクトです。そこで多くの方に喜ばれた経験から、これからも人のためになることをしたいと思いました。また、カリフォルニア大学時代の環境も大きいです。学生たちの多くはカフェテリアに集まっては、どうやったら世界がよくなるかについて真剣に語り、実際に世界を動かしていました。僕にとって起業家は、社会の課題をビジネスという道具を使って解決していく、使命を持った人たちだと考えています。

     会社経営者として心がけていることは何ですか。

    小松 一つは「ビジネスアズアート」。直訳するとアートとしてのビジネスということになりますが、僕たちにとってビジネスは思想を反映しているものであるということです。画家が絵で、音楽家が曲で自己表現をするように、僕らはビジネスで自己表現をしています。メンバーは表現者であり、ビジネスモデルは作品で、会社は生き様です。メンバーそれぞれの個性を脇に置いたまま一つになるのではなく、個性を活かしながら全員が表現者になりましょう、と。もう一つは「冷静な頭脳、情熱の心」を持つことを呼びかけています。

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    人のことを深く掘り下げながら、人のためになる事業を

     起業地に福岡を選んだのはなぜですか?またどういったメリットがありますか?

    小松 住環境の良さです。会社を起こすにあたって、自分もそうですが、メンバーにも働くためだけに生きるということはさせたくなかった。福岡は都会と自然のバランスがよく、経済規模の割に心を忘れていない都市だと思っています。メンバーの半分以上が福岡以外の土地から集まってきています。また東南アジアと距離が近いので輸出に有利なのと、花の生産量が日本で3位というのも好条件でした。

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     今後のビジョンを教えてください。

    小松 CAVIN」はまず近隣のエリアの方々から使っていただき、関東方面や東南アジアなど徐々に拡張していきたいです。ちょうど先日、世界中の起業家を対象とした台湾のプロジェクトに採択してもらい、海外展開へ向けて事業の足がかりができたところです。台湾のとある商業施設には提携を考えていただいており、僕たち自身もこれからの展開を楽しみにしています。

     これから起業する方にメッセージをいただけますか。

    小松 もし、起業しないとダメという理由があるのなら今すぐ起業したほうがいいです。最高に楽しいです。起業にあたって大切にして欲しいのはまず、健全な体。そして人についてよく考えること。歴史を振り返ると売る物と売り方は変わっても、売るのはやはり人。そこだけは長い歴史の中で変わっていません。僕は起業する際にありとあらゆる自伝を読みました。共通していたのは、偉人たちは人を深く研究しているということで、これが本質だと感じました。人間を突き詰めること、それがビジネスの鍵だと思います。

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    ライター

    山本 陽子

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