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INTERVIEW

原材料を辿り、モノの価値を考える。服から始まるマテリアルブランド「HiKEI」に迫る

株式会社フリップザミント
代表取締役 久川 誠太朗

    近年、農産物などを中心に“生産者の顔が見える”というワードが随分身近になりました。では洋服の市場ではどうでしょうか。「綿を栽培した農家まで辿れるTシャツ」「消費者がこだわりの2つの綿糸から選べる半袖ニット」を手がけるのが株式会社フリップザミントの久川さん。服を原料から選ぶという新たな選択肢を提示していきたいと語ります。

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    一枚のシャツには生産に関わる人たちの思いが刻まれている

     まずはフリップザミントという社名に込められた思いからお聞かせください。

    久川 ミントは貨幣を表す言葉だそうで、フリップとはコイントスをする時に用いられる言葉です。物事にはなんでも表と裏があるというのが僕らの考え方です。具体的には、自分たちが正しいと思っていても、違った方向から見ればそうではない場合もある。事業として今後、世の中にさまざまな提案をしていく際に、何事も両面があることを忘れずに向き合っていこうという想いを込めました。

     現在の事業を始めるに至った経緯をお聞かせください。

    久川 もともと洋服などを買う時に、作った人やカルチャーに共感することが多いタイプ なんですが、ある時から作った人だけでなく、もっと先の原料を作った人のことを知りたいと思うようになりました。そこでまずは背景を自分で辿りながら、生産者の顔が見える製品を作りたいと考え、原料となる綿花を作る農家を探すことにしました。そして最初の事業であるTraceable journey projects.」において、洋服の中でも気軽に着れるTシャツにスポットを当てた「生産者の顔が見えるTシャツ」の製作を始めたんです。僕の実家はお米を無農薬で栽培したり牛を放牧して育てたりしていていましたが、そこからの影響が大きいと思います。

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    アメリカの綿農家と出会い。日本では製造工程の工場へと足を運ぶ

     経験ゼロからプロダクトを作ることになった訳ですが、まずは何から着手されましたか。

    久川 Tシャツの原材料となるオーガニックコットンは、日本における大半の牛乳やお米と同じで一箇所に集積して工場へ届けられることが多く、原材料の農園まで辿るのは世界を見渡してもなかなか困難でした。そんな中、オーガニックコットンを仕入れている日本のとある紡績工場に出会い、その工場が契約をしている、アメリカ・ニューメキシコ州の、ドーシー・アルバレスさんの綿花を知ることができました。このことがきっかけで、その綿花を使用したTシャツを製作することになったんです。

     綿の農家との出会いがあって、さらにTシャツの生産現場にも足を運ばれていますね。

    久川 現場に行くと、事前に何かで読んだり聞いたりするのとでは大違いだと感じました。例えば、使う糸の細さや工程が異なれば、仕上がりの生地の雰囲気も全然違うんです。裁断技術の違いなども製品になった時の着心地に影響してきます。この経験で感じたのは、生産現場の方々の細部へのこだわりや、一つ一つのクオリティの高さが、最終的なTシャツの価値に繋がっていることです。服を作る過程を見たことで私自身がモノに対する価値意識が変わった、その体験を他の人にも伝えたいと思いました。

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    次のプロジェクトは「2種の糸から選べる半袖のニット」

     最近ローンチした「HiKEI(ハイケイ)」についても教えていただけますか。

    久川 HiKEI」は、糸の違いを比較してアパレル製品を購入できるECサイトです。Tシャツで使った、ドーシー・アルバレスさんのオーガニックコットンで作った糸と、紡績工場で取り扱い中のKKヴィンテージといわれる、落ち綿を集めてできた糸の2種から半袖ニットを作ります。ホールガーメントという編み機で縫い目がない仕上がりで、立体的なシルエットになります。モノ本体だけではなく、作られる過程に興味のある方にぜひ一度サイトをのぞいていただきたいですね。

     原料の特色を詳しく教えていただけますか。

    久川 ドーシーさんのオーガニックコットンは繊維が長くて、適度な光沢があります。また糸にする時にヨリを強くしているので、ドライな風合いで肌触りは良い感じです。KKヴィンテージは繊維の長さがバラバラのため、自然なムラ感が生まれます。少しヴィンテージライクな雰囲気ですね。Tシャツでは1種類でしたが、今回は2種類から比べて選ぶという仕組みを提供できます。今後はさらに、糸の種類を10種類ぐらいまで増やすことや、半袖ニット以外の洋服に展開していくことも視野に入れています。

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    原材料にフォーカスした製品を。生産と消費の現場を近づける

     今後の展開を教えてください。

    久川 僕らはファッションアパレル向けのサービスからスタートしましたが、実は洋服だけにはこだわってはいません。今後は食べ物や香りのプロダクトも考えています。HiKEI」もファッションブランドに見えますが、原材料にフォーカスしたマテリアルブランドという位置付けなんです。僕たちが生産と消費の現場を近づけることで、生産背景を透明にし、モノの価値を判断できる基準が増え、自分にあったライフスタイルを多くの人が楽しめる土台を作っていきたいです。将来、原材料の生産農園で活動を体験できる仕組みも作れたらいいと考えています。例えば、農園に来た人がコットンを植えて、数年後にはそのコットンを使った服が購入できるといったように、自給自足体験などが提供できれば最高ですね。

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     事業を通して生産背景を透明にすることには、どんな意義がありますか。

    久川 先にも言ったように実家で牛を飼っていたため、幼い頃から牛が屠畜場へ運ばれる光景を見ていました。仔牛から可愛がっていた牛が殺されるのは子どもながらに辛かったですね。また両親が休みなく働く姿を見ていたおかげで、僕は「食べ物は命や生産者の方の働きの上に成り立っているから、絶対に粗末にしちゃいけない」という考えを持つことができました。今の世の中はそんな生産の現場がなかなか見えない時代です。生産背景を透明化することで「食べ物や命を粗末にしない」という考え方を持った、モノを大切にする消費者の増加に寄与できると思います。そしてそれが不必要な消費を減らすことにもつながると信じています。

     最後にこれから挑戦を考えている方にメッセージをお願いします。

    久川 僕の場合、起業という挑戦をはじめてから、全くと言っていいほどうまくいかず、正直キツイことばかりです。ですが起業したからこそ経験できた喜びや感動もたくさんあり、多くの喜怒哀楽を感じ、生きていることを実感できています。だから、同じように挑戦する方には、挑戦は大変なことも多いけど楽しいこともたくさんある、だからお互い頑張りましょうと伝えたいです。ぜひ、自分の人生という名の挑戦を楽しんでいきましょう。

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    ライター

    山本 陽子

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