STARTUP NEWS
sp list gigi

INTERVIEW

お店に優しい仕組みを作りたい。有名音楽家が起業した理由は、東日本大震災で感じた悔しさだった

Gigi株式会社
代表取締役 今井 了介

    2020年4月7日、日本では初となる緊急事態宣言が発令され、現在も多くの飲食店が経済的な苦境に立たされています。そんな中、福岡発のスタートアップ企業であるGigi株式会社が「さきめし」というサービスで、飲食店の経済的な危機を救おうとしています。安室奈美恵さんの楽曲「HERO」や、Little Glee Monsterさんの楽曲「ECHO」の作詞・作曲など、音楽プロデューサーとしても活躍するGigi株式会社の代表取締役・今井 了介さんに、起業した理由や、今後のビジョンについて伺いました。

    03

    目指したのは今までにない“お店に優しいサービス

     まずは事業内容について教えてください。

    今井 食費を先に支払うことで、感謝や労いの気持ちを「食事という形のギフト」にして、距離や時間に関係なく誰かに送ることができるwebサービス「ごちめし」を運営しています。さらに2020年3月から、新型コロナウイルスの影響で困窮している飲食店を支援するため「ごちめし」の仕組みを活用した「さきめし」という飲食店支援をスタートしました。皆さんの頭の中にも、このお店にはなくなって欲しくないと思える人や味や場所が、きっとあると思います。「さきめし」は、そんな自分が応援したい飲食店に対して代金を先払いし、新型コロナウイルスの影響が落ち着いてから食べに行くという仕組みです。こうすることで、飲食店はコロナ禍中であっても先に代金が入るため、キャッシュフローの改善が見込めます。

    gigi service

    >>「さきめし」公式ホームページ<<

     新型コロナウイルスの影響下にある今の社会にとって非常に意義深いサービスですね。では、そんな「さきめし」の強みを教えていただけますか?

    今井 まず、お店からするとサービスの導入コストが全くかかりません。「ごちめし」「さきめし」はお店に優しいサービスを作りたいという思想の元に生まれたため、10%の手数料をお店ではなく、送り主から頂く仕組みになっているからです。また、飲食業もつまりはファンマーケティングだと考えていて、実際に飲食店の皆さんもこのコロナ禍の中でSNS等を活用して色々なやり方でファンの方々と繋がる工夫をされているんですね。そこで「さきめし」の仕組みを活用すれば、お店のメニューを全部webリンクにして貼ることができるので、インターネット上で応援を呼びかけたり、口コミで拡散されたりすることで、どれだけ距離が離れていようとリアルタイムにお客さんを獲得することができます。

     なぜ、お店ではなくお客さんから手数料を頂くビジネスモデルにしたのでしょうか?

    今井 今って多くの飲食系サービスにおいて、便利になっているのはユーザー側のはずなのに、お金払っているのはお店側っていう不思議な現象が起きています。もちろん、お店側から手数料を頂くことが悪いことだとは思いませんが、「お店からは0円」と完全に言い切ることで、日本の全ての飲食店が味方になってくれるのではないかと考えました。また、元々「ごちめし」の“ごち”は「ご馳走様」や「ご馳走を召し上がってください」から来ており、そういった感謝やホスピタリティといった気持ちを、送り主から届けるという意味でも、ユーザー側から手数料を頂く形式を取っています。こういった新しい価値観で、お店の人がいい意味で自信とプライドを持って、商品や自分のお店の味・サービスなどを提供できるような世界を創れるといいなと思いました。

    02

    きっかけは東日本大震災で味わった目の前の人を救えないという“悔しさ”

     なぜ、音楽家としてキャリアを歩んできた今井さんが、起業したのか教えてください。

    今井 元々この「ごちめし」を事業化したいと思った背景には、9年前の東日本大震災の経験がありました。震災の前年にTEEというアーティストの「ベイビー・アイラブユー」という曲を手掛けて、ありがたいことに世間的にも物凄く流行ったんですね。そこで非常にダイレクトに感想を頂けるようになって、ようやく音楽家として「音楽って素晴らしいな」と改めて心から思えた翌年に、あの震災が起こりました。音楽は人間の心を満たす大事なカルチャーだと今も信じていますが、いざ目の前に衣食住や移動手段で困っている人が現れた時には、全く何の手助けにもならなくて、悲しさや悔しさというものを感じたんですね。そこでもう同じ気持ちを味わいたくないという想いで、何か音楽以外の衣食住にまつわるような、人間の生活を直接的に応援できるような仕組みを作りたいと考えるようになりました。

     実際にサービスを立ち上げてみていかがでしたか?

    今井 もちろん、アプリやwebサービスは本当に初めて足を踏み入れる領域なので、仕組みを作る大変さに直面するなどの壁はたくさんありました。ですが、奇しくも震災から9年が経った2020年3月にこの「さきめし」をスタートし、誰かの手助けができているのかも、と思うと「本当にこの事業を始めて良かった」と感じています。特に、発信が上手なお店だと「さきめし」だけで1ヶ月で200万円以上を売上げている所もあって、お店からもお客さんからも「この仕組みを作ってくれてありがとう」という声を多く頂けるようになったことが本当に嬉しいです。

     なぜ東京ではなく福岡で起業したのか教えてください。

    今井 まずは福岡市という地が、高島市長を初めとしてスタートアップを町ぐるみで支援しているのが手に取るように分かり、すごく魅力的に感じました。実際、企業や自治体の中の意思決定をする人との距離が非常に近く、伝わるスピードや決断が速いのでGOやNGがすごく分かりやすかったです。また、東京より福岡の方が食事の単価が安く、美味しいものも多いので人にごちりたくなる機会が多いのではないかと思いました。そして我々のサービスは、人とお店を繋ぐファンとのコミュニケーションマーケティングという側面があるので、東京のように大多数が東京以外の人によって組成されているコミュニティよりも、地元の皆さま同士の繋がりが見えてくる福岡や九州のコミュニティに魅力を感じ、福岡を本拠点とすることに決めました。

    05

    サービスそのものより“ごちる”という価値観を拡げたい

     今後の展望について教えてください。

    今井 “ごちる”という仕組みが、ただ「誰かのために先にお金を払うこと」ではなく「日頃の感謝や応援したいという気持ちを伝える価値観」として、拡がってくれると良いなと考えています。実際に今、旅館を応援する「さき宿」や、自治体のこども食堂を支援する「街ごとこども食堂プロジェクト」など、全国各地で“ごちる”という仕組みを活用した応援運動が拡がっています。飲食店に限らず、この仕組みをオープンにして使っていただくことによって、お互いに気持ちを与えあうような新しい価値観や時代の創生に役立てればいいなと思います。

     これから福岡で起業しようとされている方にメッセージをお願いします。

    今井 数多の企業が、福岡を一つのサンプルマーケットとして使っていることからも分かるように、モノ・ヒト・ビジネスがかなり近い距離感で成立しているので、福岡での起業を是非おススメしたいです。それから、挑戦は人間の一つの行動パターンであると考えているので、チャレンジすることを重く考えすぎず、自分の何かをやりたいという気持ちや、困っていることを解決したいという想いを、素直に行動に移していって欲しいなと思います。

    04

    Avatar kishi4

    ライター

    岸垣 光祐

    TwitterFacebook