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株式会社KOALA Tech

代表取締役CEO Ribierre Jean Charles

「市場規模は計り知れません」九大発の最先端技術“有機半導体レーザーダイオード”の可能性

2019年に設立された株式会社KOALA Techは、九州大学発のベンチャー企業です。現在、有機材料を用いた半導体レーザーダイオード(OSLD)技術の実用化に向けて、研究・開発を進めています。現在、私たちの生活に既に広く浸透しているレーザー技術は無機材料がベースになっています。近い将来、それらが有機材料に変わることで商品の可能性が広がり、コンパクト・低コスト化が期待できると期待されています。私たちの未来を大きく変えるという、この新技術について、代表取締役CEOのRibierre Jean Charlesさんに話をお聞きしました。

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世界で初めて、有機材料を使用した半導体レーザーダイオードの実用化に着手

 事業の柱である「有機半導体レーザーダイオード」とはどんなものでしょうか。

リビエル 簡単にいうと有機材料を活用したレーザー光のことです。現在の社会において、DVDやブルーレイ、医療分野におけるレーザー治療など、レーザー光はさまざまなシーンで使用されています。将来的には現在ある無機レーザー光が、我々が実用化を進める有機のレーザー光に取って替わられることが予想されます。有機半導体レーザーダイオードは九州大学の安達千波矢教授の研究グループが30年にわたって研究を続け、2019年に成果を発表しました。

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 従来技術との大きな違いを教えてください。

リビエル 有機半導体レーザーダイオードは有機材料を使った発光素子で、電気からレーザー光を出す技術です。200〜400ナノメートルといった細かい溝の間隔を調整することで、特定の色のレーザー光を出すことができます。人の目で見える可視域からセンサー用途で使われる近赤外域まで波長を任意に決められること、製法が比較的簡単なためコストを抑えられること、またデバイスのサイズをコンパクト化できることなどが大まかな特色です。有機半導体レーザーダイオードは、電気を流せば自ら発振しレーザー光を出します。これによってコンパクトに集積できる自由度の高いレーザー光源を使えるようになります。

 この新技術が実現化することで、私たちの暮らしはどう変わりますか。

リビエル 情報セキュリティやディスプレイ、生体認証、医用といったさまざまな分野での活用が期待されます。ひとつ例をあげると、たとえば私たちが普段使っている窓にも活用できる日がくるかも知れません。我々が用いる有機半導体技術には、無機材料では難しい透明なレーザー光源を作れる可能性あるからです。外の景色が見えているだけの窓がスイッチを入れるとディスプレイに変わり、テレビになったり、絵を飾るように有名な絵を表示できたりするようになります。さらに、このディスプレイはセンサーの機能をもち、人や物の情報をとらえ伝えるなど、コミュニケーションができる高機能ディスプレイにもなるでしょう。他にも、メガネやコンタクトレンズ、自動運転などにも搭載されると考えています。

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想定される未来も市場価値も、無限大の可能性を秘めている

 福岡でKOALAを率いるまでの経緯について、簡単にお教えください。

リビエル フランスのストラスブール大学で博士号を取得し、2002年から日本の理化学研究所に入ったのが最初の日本での研究者としての仕事です。その後、イギリスや韓国の大学で研究や教授職に着任し、2013年から九州大学OPERAにて研究活動を行うため日本へ来ました。理化学研究所時代に、半導体レーザーダイオードの研究を成功させた安達千波矢教授とのご縁ができ、2019年にKOALAの設立にいたりました。

 リビエルさんは半導体レーザーダイオードにどんな魅力を感じていますか。

リビエル イギリスのセントアンドリュース大学でラボに入ったときに、初めて有機エレクトロニクスと出会ったのですが、有機半導体レーザーは発光素子の他にも、メモリーや太陽電池などさまざまなデバイスに展開できるのが魅力です。非常にエキサイティングなものだと思っています。

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 具体的な今後の展開の一例を教えてください。

リビエル 2023年の実用化に向けた最初のターゲット製品として、医療分野で用いる単一レーザー光源モジュールやスマートフォンで用いる生体センサー用光源としての搭載を考えています。ほかにも特許ビジネスも検討しています。何にもないところから世界を変えるほどの夢を実現させることに対して、ワクワクしています。有機半導体レーザーダイオードはそれほど世界を変えるインパクトがあるものなのです。

 実用化に成功した場合、想定できる市場規模はどれぐらいですか。

リビエル 技術が安定し、実用化できた場合の市場規模は、計り知れません。技術が適用される製品によって、マーケットサイズは違ってきますが、当初のターゲットであるスマートフォンや車載における生体認証市場を例にとると、現在は、2025年には1.6兆円の規模に成長するといわれています。

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九州大学およびその周辺を、日本のシリコンバレーに

 福岡で起業するメリットはどんなところにありますか。

リビエル 当社は九州大学に近い場所にあり、九州大学には有機材料、光技術、特に有機半導体を活用した発光デバイスなどを研究している人たちがいます。ほかに周辺には(公財)九州先端科学研究所(ISIT)や(公財)福岡県産業・科学技術振興財団(i3 OPERA)など産学連携を目的とした組織もあり、技術の橋渡し、実用化を支援する産学連携の機能が集結している場所です。私たちはこの場所が有機半導体光デバイスシステムを主体とした、日本のシリコンバレーになるといいと思っています

 地理的なメリットはありますか。

リビエル グローバルマーケットを考えた時、福岡は韓国、中国、アジアなどとの地理的なの近さが利点。ここでビジネスを起こして大きくするのはメリットであると思います。福岡はアジアのハブになれるはずです。

 最後に何かに挑戦しようとしている人たちにメッセージをお願いします。

リビエル 起業の何かコアのビジネスのタネや、起業するという行動そのものを発見したら、信じて挑戦し、諦めないことです。技術と未来を信じてネバーギブアップ。夢を追い続けることが大事です。

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ライター / 山本 陽子