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株式会社nanoFreaks

代表取締役 千葉 佳祐

漁師の命と家族を守るシステムを開発する、九州大学発のスタートアップ

北海道の漁師町で生まれ育ち山形の大学を卒業後、南の九州へと居を移した千葉 佳祐さん。自分の力で何かをしたいという情熱のもと、2019年8月に株式会社nanoFreaksを立ち上げました。熟考の末、千葉さんが掴んだビジネスアイデアは、子どもの頃から見聞きしていた海難事故を減らす手助けとなるシステムでした。助けを“呼ぶ”、“御守り”から名づけられた「yobimori(ヨビモリ)」、そして起業についてお話しを伺いました。

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海での事故をスピーディーに知らせて、漁師の命を守る

 開発中の「yobimori」について聞かせてください。

千葉 「yobimori」は漁師が転落などの事故にあったとき、救助要請を出すシステムのことです。漁師は首にかけて携帯しやすい小さな端末を持ち、海の上で万が一何かあったときにボタンワンプッシュ(1.5秒長押し)でSOSを知らせます。今後のアップデートで自動化を目指す予定です。それを近くの仲間が感知して助けに向かいます。受信は同じ端末や、スマホやソフトウェアなどで、転落した場所はもちろん、誰が捜索に行ったか、捜索された場所などの情報も共有します。

 なぜこのサービスが必要とされるのでしょうか。

千葉 海上保安庁によれば2016年から3年間で、海上の死亡事故件数は3,000件を超えるとされています。漁は一人で船に乗ることが多く、スマホを運転席に置いていても、身につけていないことも少なくありません。よって船から落ちても助けが呼べないんですね。周りの船がしばらくして事故に気づくか、または陸で待っている漁師仲間や家族が帰ってこないことに気づき、そこから捜索を始めるというのが現状です。事故があってから数時間経って起こる捜索を、数分に変えようというのがこのサービスです。

漁協の方々はこのシステムに最初から共感してくださって、協力をいただいています。役員会での説明など多く出入りをさせてもらっています。

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海に出る者の安全を祈る、家族の視点からの発想

 そもそも千葉さんはなぜ起業しようと思ったのですか。

千葉 当初は教員になるつもりで化学を専攻していました。自力で生きることに強く惹かれるようになり、選択肢のひとつに起業を考えるようになりました。大学の研究室に福岡出身の先生方がいたこともあり、せっかくなら今まで縁がなかった九州に行ってみようと思って九州大学大学院にきました。現在は起業のため休学しています。

 起業にあたり、まずは何をしましたか。

千葉 九大起業部に入部し、スタートアップ施設のFukuoka Growth Next (福岡市中央区)に足を運ぶなどして起業はどんなものなのか、少しずつ掴んでいきました。経営は特別に学んでいませんが、多くの起業家や先輩方に出会い教えていただいています。

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 ビジネスの種はどのようにして生まれたのですか。

千葉 北九州市主催のビジネスコンテストに出たことがきっかけです。「yobimori」は起業にあたって、自分の内面をじっくり見つめ、掘り起こして出てきたことです。私は北海道の漁師町の生まれで、漁師が海で亡くなる事故や家族が嘆き悲しむ姿を見てきました。私の祖父もそうです。そこで「yobimori」があれば、確実に喜んでくれる人がいる、さらに自分も熱中できるという点でこのビジネスをしようと決めました。

 福岡で起業することをどう感じていますか。

千葉 Fukuoka Growth Next の存在をはじめ、起業する環境は整っていると思います。街の規模がそれほど大きくないこともあって、いろんな方と知り合いになりやすいです。誰かと一人と知り合えば、その横のつながりでまた誰かと顔なじみになっていく、そんな感覚です。今も迷ったときには出資者や経営者の方に相談します。「よくあることだよ」とさらっと返されて、その度に先輩方のすごさを感じます。

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自分の中にあるものを見つめること、偶然を大事にすること

 経営に迷いがあるということですが、これまで大変だったことは?

千葉 思ったよりも簡単に結果が出せなかったことです。仕方がないのですが全員が学生でノウハウがなく、時間がかかってしまうのです。またエンジニアを含めて5、6人でチームを組んでいますが、経営者の私とメンバーとの熱量は違うことも気づきました。全員がプレイヤーでなければならず、チームのために一人一人ががんばらないといけない。そのためにはコミュニケーションが大切なことも学びました。

 今後の予定を教えてください

千葉 端末でいうと、海に落ちたら自動に検知してSOSを発信するシステムを考えています。また事故を検知したら近くのスポットからドローンを飛ばして、ライフジャケットを空中から落とすことも考えています。サービスは漁業関係者の方からスタートしますが、今後は釣りやマリンスポーツといった海に関わるすべての人に使っていただきたいと思っています。

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 これから挑戦する人や同じ学生さんに向けて、メッセージをお願いします。

千葉 自分のことを考え続けて、自分が本当にやりたいことを探すことです。前述した、確実に喜んでくれる人がいるか、自分も熱中できるという2点は大事です。また面倒くさくても不安でも、まず行動すること。わからないから、勉強していないからやれないのではなく、やることを決めてから勉強する、ぐらいでいいと思います。さらにもう一つ加えていうのなら、私は"人生を変えるような偶然"と出会う確率を上げることを意識的にしています。私は住む場所を変えたら起業家になりました(笑)。人生ってだいたい思い通りにはいかないものです。それなら、転がってきた偶然を選びとったっていい。それが道を開くことではないかと思います。

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ライター / 山本 陽子