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INTERVIEW

レガシー産業をアップデートする。「現場密着型」のDX事業で地方再生を推し進める二人の起業家

株式会社クアンド
代表取締役 下岡 純一郎 / 中野 雅俊

    人手不足など課題を抱える地域産業を、IT技術で支え、地域を蘇らせたいと考えている企業があります。DX事業(デジタルトランスフォーメーション)を主体とし、2017年に創業した株式会社クアンドは、北九州市と福岡市の両市にオフィスを設立。現場にフィットした事業は次々と軌道にのり、企業から熱い視線を送られています。共同創業者でともに北九州出身、小学校からの同級生という下岡純一郎さんと中野雅俊さんに話を伺いました。

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    代表取締役CTO 中野 雅俊さん(左) 代表取締役CEO 下岡 純一郎さん(右)

    アナログな現場に欠かせない“人の勘”をデジタル化する画期的事業

     起業したきっかけは何でしょうか?

    下岡 北九州市は鉄鋼業などが盛んでしたが、縮小傾向にあり、時代にあった変化を求められています。そこでITを活用したシステムを作って提案することで、地域産業のアップデートのお手伝いをしたいと考えました。一般にDX事業といわれるものです。

     いつからDX事業を考え始めたのでしょうか?

    中野 少なくとも最初からではありません。互いに社会人経験を積みながら「できることは何だろう」と考えつつ、起業しました。DX事業が固まってきたのは2年ほど前です。僕は技術で何かをやりたい、下岡はマーケティングやコンサルティングの視点から何かをやりたい、それがミックスされた形です。

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     「地域産業・レガシー産業のアップデート」を掲げ、地域にフォーカスした事業に取り組んでいらっしゃいます。代表例を教えていただけますか?

    下岡 SynQ(シンク)」は、建設業やメンテナンス、設備管理業などの現場で活用いただくツールです。工事現場などで問題が起きると監督が足を運ぶ必要がありますが、それを遠隔で可能にします。

    中野 現場にはスマホがあり、オフィスにあるPCから指示を出します。Zoomでもできるのでは?と思われるかも知れません。しかし僕たちが提案するのは現場にかなり特化したものです。例えば同じ画面を出して、まるで隣で指示を受ける感覚で伝達が可能です。騒音で意思疎通が図りにくい現場では、発言を即座にテキスト化する機能も役立つと思います。「SynQ」は2020年秋に導入予定です。

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     その他ではいかがですか?

    下岡 鉄の板の製造工程におけるソリューションも代表例です。技術難易度が高く、2年を要しました。

    中野 鉄の板を裁断して作る際、押し出す工程で板の位置がずれます。従来は作業者が目視に頼って制御していましたが、これにAIを活用しました。具体的にはカメラ映像と電気信号をAIに覚えこませて、センタリング作業のサポートを行えるようにし、最終的には自動化を目指しています。知覚を置き換えて、人の勘を作るといった感じです。

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    幾度も現場に足を運び、よりカスタマイズした技術を提供するのが強み

     他にも釣り具店、パン店など請け負う業種は多岐にわたります。

    下岡 僕たちの強みの一つはデジタルを導入しながら、事業構想を打ち立てられることです。同様の会社がまだ少なく、あらゆるところからお声がかかったというのが現状です。様々な業種に携わっていますが、課題は似ていることも多いのです。

     事業には自社開発と共同開発とありますが、それぞれはどう関係していますか?

    下岡 自社開発はプロダクトを製造して買ってもらうこと。共同開発はクライアントと共に課題解決のプロダクトを作り、クライアントが販売して利益を得ます。これら二つは実は繋がっています。クライアントとのやりとりのなかで、一見してわからなかった深い課題が見つかり、着想となって新たなプロダクトが生まれる。さらに将来、その技術と経験をクライアントに還元するという、サイクルが生まれています。

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     興味深いです。ITはオフィスワークのイメージがありますが、お話を聞いていると意外にも現場主義のようにもお見受けしました。

    中野 当社に現場目線があるという点はよくおっしゃっていただきます。世の中でいうDX事業は「パッケージを作りました、使ってください」といったイメージがあるかも知れませんが、当社はそうではないですね。現場に何度も足を運んで、課題や解決策を見つける、その点も強みといえると思います。

    下岡 現場の方と膝を詰めて少しずつ信頼を重ねていく。エンジニアであってもそれができるのが我が社らしいところです。

    コンパクトシティ・福岡だからこそ、人や仕事の繋がりができる

     北九州市、福岡市で起業する良さを教えてください。

    中野 福岡はいい意味で狭いですよね。一緒に働くスタッフも、偶然に街で再会した知人の知り合いです。東京ではまずそんなことは起きづらい(笑)

    下岡 東京では起業家としても技術者としても、埋もれる感覚があるかも知れませんね。福岡は地方ですがエンジニアは多く、会社にとっては採用面で利点もあります。ベンチャー企業同士の連携も作りやすい。また福岡市は「グローバル創業・雇用創出特区」だけあってサポートも手厚いです。

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    地元福岡にエキサイティングな仕事を作り、皆が憧れる地域社会へ

     今後のビジョンをお聞かせください。

    下岡 直近でいいますと、先ほどの「SynQ」を運用させてOffice365やAdobeなどのように現場で一般化するソフトに育てたいです。将来的にはミッションである「地域産業・レガシー産業のアップデート」を目指すことです。仕事って面白いし、価値を生むことにはやりがいがあります。そういう仕事がもっと地方にあるべきだと以前から思っています。私たちの能力で産業を目覚めさせ、働く人が楽しくなるような地域社会を作りたいです。

    中野 私は従業員の幸せを優先に考えています。そして福岡でも世界レベルの仕事ができて、エキサイティングかつ成長できる会社になればうれしいです。そこができて初めて、いい結果を社会にもたらすことができるし、利益がでれば企業価値が高まり、経済も潤います。

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     最後に福岡で起業しようという方々に、メッセージをお願いします。

    中野 当たり前のことを当たり前に、継続的に愚直に努力にすることが必要です。たとえば技術者として起業したいなら、技術を身につけた上で進める。飛び道具を使おうとしないことですね。そしてモチベーションを保つには、好きなことを好きなようにすること。

    下岡 私は流行に流されない起業がいいと思っています。大事なのは継続する意義を自分の中に持つことです。本当に好きなのか、意義があるのかを考えて、他人の力でなく、自分の根本にある力で起業したほうがいいと思います。話は変わりますが、経営ってゲームに似ているところがあります。自分のレベルを上げながら仲間を募り、何かを成し遂げて社会を変えていく。仮想空間でゲームするより、リアルな世界で起業というゲームをするのは楽しいよ、と伝えたいですね。

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    ライター

    山本 陽子

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