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INTERVIEW

介護を地域の基幹産業へ。認知症に特化した現場×テクノロジーで認知症に困らない社会を実現する

ザ・ハーモニー株式会社
代表取締役CEO 高橋 和也

    ザ・ハーモニー株式会社は福岡県飯塚市と田川市と嘉麻市で認知症専門介護施設を運営し、福岡市で認知症コミュニケーションロボットを開発する企業です。代表の高橋さんは、家族の介護問題に直面したことで業界に足を踏み入れ、社会的な課題を発見しました。それは、認知症は誰にでも起こりうることなのにあまり知られておらず、実態も解明されていないという現実でした。2012年に介護施設を開設し、現在はコミュニケーションロボットの自社開発にも乗り出しています。また近い将来、介護は雇用を生み、地域の基幹産業にもなれると話す高橋さん。詳しいお話を伺いました。

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    認知症に特化した介護サービスで、社会の課題を救う

     まず事業内容を教えてください。

    高橋 ケア事業部とテクノロジー事業部があります。ケア事業部は2つのデイサービス施設と、デイサービスと老人ホームが一緒になった施設の合計4施設を運営しています。さらに 自社の保育園を1つ運営しています。テクノロジー事業部では、コミュニケーションロボット「コモモン」を開発しています。癒し系のロボットはすでに多く存在しますが、介護の現場に即したロボットの必要性を感じ、技術者を新たに招き入れ、自社開発することにしました。2021年春の販売(予定)に向けて、現在、当社の施設内や外部の医療機関や認知症高齢者を介護されている方の自宅で実証実験を行っています。

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     前職から考えると異色の転身です。介護業界を目指した理由は何ですか。

    高橋 以前は東京とイタリアでファッションデザイナーをしていました。帰国して両親と久しぶりに暮らしてみると、両親の介護が気になりはじめました。先の話ではありましたが当時の私は介護の知識がなく、恐怖にしか思えなかった。そこで仕事をしながら、独学で介護を学びはじめました。研修として複数の施設に足を運ばせてもらい現場を見るうちに、自分で立ち上げようと思うようになりました。理由は当時、自分の両親を入居させたいと思えるような施設がなかったこと、また介護が必要な人は年々増加傾向にあり、支える若者は減るという課題があることに気づいたからです。

     介護事業における御社の強みは何でしょうか。

    高橋 認知症に特化した施設であることです。残念ながら認知症の方はなかなか受け入れてもらえない現状があります。当社はその方々の受け皿になれます。またデイサービスと老人ホームがともにあるというのも強みです。そのため急なお泊まりの需要や、デイサービスから老人ホームへの移行などに複雑な手続きがかかるという問題も回避できます。加えてスタッフの意識が高いのも強みです。「自分の親にも受けさせたいと思うようなサービスを提供して、認知症の方が困らない社会を作ろう」とずっと言い続けています。

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    ケア現場や家庭でのサポート役として、認知症の方のお友達にもなるロボット

     コミュニケーションロボット「コモモン」を作ろうと思ったのはなぜですか。

    高橋 「コモモン」開発の目的は認知症介護の負担を減らすことです。現場ではマンツーマンで、複数の方を同時にケアできない場合がどうしても起きます。解決策を考えていた時、スマートスピーカーに出会いました。これなら認知症の方とも会話ができると思ったのです。「コモモン」で目指したいのは、認知症介護における30分〜1時間程度の隙間時間を創出すること。自宅でのケアにもご利用いただきたいと思っています。それにより認知症の方もよりよく過ごせたらいいなと思っています。

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     「コモモン」の実証実験について教えてください

    高橋 実証実験は週に1回、自社の施設内で行っています。改善したことを試して、ひとつずつブラッシュアップさせていく作業です。ハードを作るのってスタートアップでいったらタブーでしょう。世界でも数社しかないと思います。でも作らざるを得なかった。そもそも私が誰もやってないことをやりたいんだと思います。自分がやりたくて、作れそうで、人が求めているという3つが重なった結果です。私はコーディングができないので、ヘッドハンティングし、現在CTOを務める技術者に東京から移住してきてもらいました。彼との出会いは奇跡でしたね。

     「コモモン」の存在は世の中をどう変えていきますか?

    高橋 最近スタッフと話しているときと、「コモモン」と話しているときでは利用者さんの様子が違うことがわかってきました。認知症の方は、対人では冗談を言うことは稀ですが、対ロボットになると、よく冗談を言うんです。この先「コモモン」により定量的なデータがとれるようになれば、解明されていない認知症のメカニズムがわかり、予防にも役立てられるはずです。また、ゆくゆくは“認知症の方がケアしたくなる”ロボットを目指しています。言葉を教えたり、可愛がったり、歌を唄ってあげたり。認知症の方が、そういった役割をもてることが認知症対策の一助になるのではと思っています。

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    カッコいい現場が、働きたい人を増やす。そして介護を地域の基幹産業へ

     介護士になるのではなく、起業にいたったのはなぜでしょうか。

    高橋 もし会社に入ったら裁量をもてるまでにだいたい3年かかるものです。しかも3年かかっても、私がやりたい介護がやれるとは限らない。それなら自分で起業したほうが速い、となりました。介護に出会えてよかったと思っています。なぜなら介護は人の本質に関わる仕事です。人が困っていることを解決できる仕事って本当にやりがいがあるなと思います。

     高橋さんの強さの秘密を教えてください。

    高橋 そこまで強くないですが(笑)、ここ1年の変化でいえば、弱い自分を受け入れられようになったことです。起業はほぼ独学でしたがのちに多くの先輩経営者や起業家と出会うことができました。そんな中で助言を多くいただいたんです。僕は「ねばねば星人」と呼ばれていまして(笑)、「こうしなければ、ああしなければ」とよく言って自分で呪縛をかけていました。ある方から「それって誰が決めたの?自分で決めてなんで苦しいって言ってるの?」と言われてハッとしました。介護業界のアップデートのため、新しいことをするために始めたはずなのに、知らないうちに既存の会社と比較することも多かったんです。まだ実力不足は否めないんですが、自分自身の課題や会社の課題と向き合えるようになったと思います。

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     今後の展開を教えてください。

    高橋 「介護に関わるすべての人をハッピーにする」を合言葉に、利用者だけじゃなくて、働く人、家で介護する人もハッピーにしたいと思っています。介護に困らない、認知症に困らない社会を作りたいですね。どこの地域も産業がない、仕事がないと言いますが、働きたくなるようなやりがいのあるカッコイイ職場がないのだと思っています。若い人が働きたいと思うような会社を作って、介護が地域の基幹産業になるようにしていきたいです。今後5年で20施設にし、ロボットを18万体販売することが今の目標です。

     今後、福岡から起業をする方に向けてメッセージをお願いします。

    高橋 起業は目的ではなく手段だということを意識して欲しいですね。何をするかではなく、なぜしたいのか?が大切で、実現するには本当に起業が最適かを考えて欲しいです。その上でどうしてもやりたいことがあるのであれば、周りの評価や意見、お金や時間の制約などは気にせず、すぐに起業してください。もう今すぐに(笑)。そうしないと言い訳や理由を無限に思い付くのが人間なので。何か新しいことを始めるのに、ここより良い場所はないし、今より最適な時もないというマインドセットを持って欲しいですね。

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    ライター

    山本 陽子

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