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INTERVIEW

"お酒が弱い人"に新たな選択肢を。ペアリングに特化したドリンクで目指すノンアル新時代

YOI LABO株式会社
代表取締役CEO 播磨 直希

    2020年6月、YOI LABO株式会社は第1弾のプロジェクトとなる、ノンアルコールドリンク「Paring Tea(ペアリングティー)」の予約を開始しました。ノンアルといっても、ただのアルコールフリーな飲み物ではありません。ワインのごとく料理とのペアリングを提案する、今までにない高い付加価値のあるドリンクなのです。一説には、お酒を飲まない“下戸市場”は3,000億円以上あるといわれ、新規市場開拓という点でも期待が寄せられています。改めてスタート地点に立った、代表取締役 CEOである播磨直希さんにプロダクトの特徴やこれまでの道のりについて語っていただきました。

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    “お酒が飲めないなんて残念…” そんな風潮を変える

     事業内容を教えてください。

    播磨 コーポレート・ミッションとして掲げるのは、「世界からお酒の不公平をなくす」。お酒が体質的に合わない人、そもそも好みではない人、あまり量を飲まない人であっても、楽しい社会にしていきたいと思っています。その第1弾として、料理と一緒に味わうことで食事のシーンがより魅力的になるような、ノンアルコールの食中ドリンク「Paring Tea(ペアリングティー)」を開発しました。

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     料理とノンアルの「ペアリング」に注目したきっかけは何ですか?

    播磨 以前からお酒に関する事業をしたいと考えていました。ある時旅先で、4種類のリンゴジュースを見つけたんです。酸っぱい、甘い、重い、軽い、とそれぞれに味が違っていました。特に印象に残ったのが酸味のあるジュースで 単体で飲むにはキツいと感じたんですね。その時「サラダや魚と合わせたら美味しそうなのに」とふと浮かんで。飲み物と食べ物をマッチングさせて、美味しさを引き出す、ワインでいうペアリングの考え方をノンアルコールのドリンクに組み込もうと思ったのです。

     そこにビジネスの勝ち目を見つけたのですね。

    播磨 はい。調べてみると海外のレストランなどでは、ジュースとのペアリングは割と一般的なようでした。しかし当時、日本では数件のレストランで対応している程度だったんです。もちろん、日本でポピュラーでない理由もわかり、そこから当社なりの形ができあがっていきました。

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     日本で今までポピュラーでなかったのは何故でしょうか?

    播磨 ドリンクでペアリングするのなら、ワインのようにドリンク専用のソムリエを立てる必要があるからです。まずはその人材の問題ですね。さらに、実は既製のものではなく、料理に合わせられるような質の高いドリンクを作ろうとすると、かなり手間がかかります。例えばお茶ベースのドリンクでは抽出に時間を要することが多く、スパイスなどを用いる場合、それぞれに適した抽出方法を選択する必要があります。弊社はボトルタイプのドリンクとして提供することで、人と手間というオペレーションのカットを実現させようとしています。

     お店側は注ぐだけで、ベストマッチな飲み物が提供できるメリットがあるんですね。

    播磨 飲まない人がドリンクを選ぶとすると、ノンアルコールのビールや梅酒など、選択肢は少ないわけです。そもそもビールを飲まない人がノンアルコールビールを喜んで選んでいるのかというと疑問が残ります。そのような方たちはウーロン茶やコーラ、オレンジジュースなどを仕方なく選ぶことが多いのではないでしょうか。バリエーションがあるお酒の世界は華やか、対して飲めない人は選択肢が少なくて残念、というような飲む機会における不公平を変えたいのです。

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    前例がない製品だけにメーカー選びに難航。最後の一社に全力以上のプレゼン

     製品について詳しくお聞かせください。

    播磨 フレンチのコースに合わせた3種類です。オードブルとのペアリングを想定した「FOR ANY DISH」はグリーンティベースに、甘さや炭酸を控えめにしました。お茶が口の中の脂っぽさをスッキリさせます。「FOR WHITE FISH」は、魚料理にあわせるために作りました。こちらは洋梨のピューレをミックスしています。果実のミネラル成分と魚との相性がいいんですよ。3本目の「FOR RED MEAT」は、ダージリンティーをベースにジンの原料であるジュニパーベリーと、ハイビスカスの酸味を加えています。焼いたお肉と相性がいいカカオがさらに料理の味を引き立てます。

     着想から完成までは順風満帆でしたか?

    播磨 いいえ。特に工場探しには時間がかかりました。リストに上げただけでも100社はあったと思いますが「こんなの作ったことないです」と散々断られましたね。今まで市場にありませんから、それはそうなんです。清涼飲料水という区分ではあるものの、誰も作り方の知識を持っていない。売れるかどうかもわからず、一回限りで終わるかもしれないのにそこに時間をかけるメリットがない。最終的に今の工場が「やったことないですけど、やりましょう」と言ってくれたんです。

     どうやって口説き落としたんでしょうか。

    播磨 資料を作って120%のプレゼンをしました。一緒に協力してもらうからには、相手にもメリットがないといけないと思いました。そこで今後、こういう商品を作っていきますと、これだけ発注する予定です、と計画をお伝えしました。想定している成長曲線まで見てもらいました。

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    大学時代にベンチャー企業で得た経験が今、役に立っている

     起業のノウハウはいつ、どんな時から身につけたのでしょうか。2,500万円と高額な投資額についてもお聞かせください。

    播磨  起業したいと思ったのは学生の頃です。大学時代には、福岡のベンチャー企業に無償インターンとして入りました。その時にベンチャーとしての知識を叩き込みまれました。資金調達については創業する以前から懇意にしていただいていたVC(ベンチャーキャピタル)や、尊敬する先輩起業家の方々からご出資いただきました。また“ゲコノミクス”で知られる、レオス・キャピタルワークスCEOの藤野 英人さんには、同じノンアルコール市場をサポートする立場としてどうしても投資してもらいたくて、直接お会いしてプレゼンさせていただきました。投資が決まったときはビルの1Fで大きくガッツポーズしましたね。

     これまでの経験で得たものについて教えてください。

    播磨 この事業を始めてから、行動を起こすごとに3つ、4つの問題が同時に発生するということが起きました。しかも全部が超えられないような壁ばかりです。それは私の未熟さから起こることではあるものの、事前に予測して避けるのは困難なものでした。例えば今回の新型コロナウィルスの影響もその一つです。しかし乗り越えなければ先には進めません。そこでただ愚直に5パターン、10パターンと解決策を絞り出し、一つずつ対応するしかないのだということを学びました。その甲斐があり、最近では多少の問題では動じない胆力が身についたと思います。

     乗り越えられた秘訣はなんだったんでしょうか?

    播磨 乗り越えられないと思っても、角度を変えたら解決策はあるな、ということ。それが最初の2、3回目の壁を超えたときに分かってきたんです。落ち着いて対処できるようになりましたね。パニックになると他の選択肢が見えなくなるのでよくありません。そのあたりでマインドが変わったのが大きかったです。

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    ノンアルコールドリンク業界の、開拓者となる

     今後のビジョンをお聞かせください。

    播磨 ノンアルコールドリンクのジャンルで 、第一想起となる製品が当社のものになるようにしたいですね。ただうちの一人勝ちだけを望んでいるわけではありません。競合がいることで別の選択肢が生まれれれば消費者はもっと楽しめるし、市場も広がると考えています。

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     起業してよかったことと、大変だったことを教えてください。

    播磨 大変じゃないことは一つもないですね(笑)よかったことは、一つ一つの刺激が大きいので全て“自分事”になるということです。みんなの会社ではあるけど形式上、私が代表 ですから私の裁量一つでうまくもいくし、悪くもなる。責任の所在が明確だし、一つ一つが重要なので、その分喜びも大きくなります。例えば、ヒアリングのために飲食店に出向いた時に「できたら教えて、導入するよ」と言ってもらえたのは嬉しかったですね。

     起業を考える方にアドバイスをお願いします。

    播磨 視座が高く、目指す界隈をよく知る先輩に会いに行きまくることです。つながりを作りましょう。起業家の方々はペイフォワードの思想を持っておられる方が多く、私のようなどこの馬の骨かもわからないものにも本当によくしてくださいます。私がプロダクトも固まっていないのに起業できたのは、そんな先輩方が背中を押してくれたからです。やることができてから起業するのもいいけれど、とりあえずやっちゃうというのも大事。トリガーをつくることですね。起業家のみなさんに会いに行くのって、怖いし、緊張しますけど一人でも相談できる相手がいると変わりますよ。

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    ライター

    山本 陽子

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